2025年5月31日 かわいいモノ、かなしいコト。
「あぁ~、まーた、“おつとめ品“のシールを貼られたね」と、
なじみのスーパーの野菜ワゴンでそれを見かけると、つい、ため息がこぼれます。
「今の時間、誰か買ってくれないかネェー」とぼやきながら、
二つぐらい選んでかごに入れました。
地元に人気があるこのスーパーにはこだわりがあり、
どんなに物価があがろうともトマトの種類と値段が他の店と比べ豊富で安い。
買いきれない“おつとめ品“のトマトにそっと語りかけます。
「あなたもさぞかなしいでしょうなぁ~」と背を向けて離れました。
……トマトかなしいわ。
休日に時間があると、私はトマト風味のほうとうを作ります。
前の晩、ボウルに小麦粉を捏ねてから一晩寝かせ、
翌日、捏ねた生地をさらに数回繰り返し捏ねます、
再度1時間少々寝かせ、その間に具材を準備します。
我が家のほうとうに欠かせないのはトマト。トマトは主役です。
まず、豚のバラ肉、トマトの順に出汁を作り、
真っ赤な汁と肉の旨味に季節野菜を入れ、そして、弱火で煮込み、
捏ねた生地を麺棒で伸ばしてからカットし、さらに煮込みます。
その成り行きをとても楽しむのが、究極のひとときです。
トマトは野菜と果物どちらに分類されるのとよく聞かれますが、
私はどちらでもいいです。
私はいつしかトマトにハマってしまっていたのでしょう。
たぶん幼少期に酸っぱい甘いトマト味は砂糖のアイスクリームより、
身近で現実的なおやつだったのでしょう。
ミニトマトは果物感覚で食べています。一つ一つ張りがあり、
プチっと弾けると同時にくる酸味、その後すぐ口にいっぱい広がるその甘み……
かわいくて愛嬌があり、無邪気でキラキラしているアイドルの如く。
たまに、「トマトを死ぬほど好き」という人と出会った瞬間、
紆余曲折迷路の中、目に見えないバイパスが現れるような気がするのです。
言葉が不要、全部通じてしまう、まさに“同志“です。
先日、隣の席で定食を食べていた少年が、
サラダに添えたトマトを二切れ、手をつけずにお店を出て行きました。
私の大好きなトマトなのに。
いつしかこの少年がトマトの良さをわかる日がくるころを切に願うばかりです。
トマトかなしいわ。